令和6年3月29日付けで、『介護予防・日常生活支援総合事業の適切かつ有効な実施を図るための指針の全部を改正する件』が公開され、市町村の役割が明確化されました。
【目的】(旧ガイドライン)総合事業は、市町村が中心となって、地域の実情に応じて、住民等の多様な主体が参画し、多様なサービスを充実することにより、地域の支え合いの体制づくりを推進し、要支援者等に対する効果的かつ効率的な支援等を可能とすることを目的としている。
(新ガイドライン)総合事業は、認知症や障害の有無にかかわらず、地域に暮らす全ての高齢者が、自立した日常生活を送ること、また、そのための活動を選択することができるよう、地域に暮らす高齢者の立場から、市町村が中心となって、地域住民や医療・介護の専門職を含めた多様な主体の力を組み合わせて実施することにより、居宅要支援被保険者等に対する効果的かつ効率的な支援等を行うことを目的としている。
この指針の中で、「市町村は、地域の高齢者にサービスを提供するという立場を超えて、地域の多様な主体が持つ多様な価値判断を踏まえつつ、ファシリテーションの役割を担いながら多様な主体との対話を重ねることで、それぞれの主体が、目標に向かって自らの意思で行動を起こし、地域の中でその力を発揮しながら、共創していくことができるよう、地域づくりのプロジェクトマネジャーとしての役割を発揮することが求められる。」とされ、
さらに、「市町村が、こうした役割を発揮するに当たっては、生活支援体制整備事業(法第 115 条の 45 第2項第5号に規定する事業をいう。以下同じ。)による高齢者の自立した生活や介護予防に資する多様な活動(以下「生活支援・介護予防サービス」という。)の資源開発やネットワーク構築等のためのコーディネート機能を果たす者(以下「生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)」という。)や協議体(地域の多様な主体により構成される生活支援・介護予防サービスに関する企画、立案、方針策定等を行う場をいう。以下同じ。)を活用することや、地域住民が自分事として主体的に地域の多様な活動に参加することが不可欠であるという視点を持つことが重要である。」
【総合事業の期待される効果】
・ それぞれの高齢者が元気なうちから、趣味的活動や社会貢献活動、有償ボランティア、就労的活動等の様々な活動を通じた総合事業との早期の関わりを深めることで、介護予防の無関心層を含めた高齢者の地域の活動等への主体的な参加や心身の機能低下の早期発見などにつながること。
・ 要支援となっても、支援が必要となる前の価値観や生活様式を維持したまま地域で暮らすための活動やサービスの選択肢を拡大すること。
・ 総合事業が地域に幅広く根付くことで、介護が必要となっても、地域との関わりの中で尊厳を保持しながら自立した日常生活を送ることのできる地域づくりが実現されること。
また、地域の多様な主体が総合事業を媒介として介護保険制度に関する施策と関連する取組を進めることで、商業、交通、教育、農業、地域づくりなどの高齢者の日常生活と密接に関わる分野における活動との関わりを深め、地域住民の活動と相まって地域づくりの活性化につながる。
【市町村が従前相当サービス以外の総合事業を実施する場合の留意点】
高齢者の選択肢の拡大を図るという立場から、企画・立案を行うことが重要であり、以下のように、高齢者にとって分かりやすい事業内容や目的を示すことが重要である。
・ 居宅要支援被保険者等を含む高齢者が担い手となって活動(就労的活動を含む。)できるもの
・ 高齢者の日常生活支援を中心として行うもの
・ 訪問型サービスと通所型サービス、一般介護予防事業、高齢者の保健事業や保険外サービスなどを柔軟に組み合わせて居宅要支援被保険者等を支援するもの
市町村は、地域の高齢者にどのような生活課題があるか、地域住民がどのような関心を持って地域で活動をしているのかを把握するとともに、地域ケア会議や在宅医療・介護連携推進事業、生活支援体制整備事業、認知症総合支援事業、さらには、居住支援、意思決定支援、権利擁護等の様々な高齢者を支える取組との連動を図りつつ、必要な支援を実施することが重要である。